日本瓦は、古くから親しまれてきた日本家屋の象徴ともいえる屋根材です。
お寺や神社にも使われており、昔は日本の建物全てが日本瓦で守られてきました。
しかし最近では、建築コストが高いことや分譲住宅が増加していることが原因となり、特に都市部ではどんどん姿を消しつつあります。
近年、屋根材にも様々な種類が登場し、選択の幅が広がっているため、これは仕方のないこととも言えるでしょう。
ただ、日本瓦には日本瓦の良さがあります。
日本で生まれた日本瓦は、日本の風土にピッタリとマッチした機能を備えているのです。
ここでは、日本瓦の特徴やメンテナンスについて紹介していこうと思います。
目次
日本瓦の特徴
日本瓦は、粘土を原料に作られる焼き物の瓦のことを指します。
和瓦と呼ばれることもありますね。
似ているものにセメント瓦がありますが、こちらはセメントが原料の別物になります。
日本瓦は、メンテナンスしなくても50年以上持つ非常に耐久性の高い屋根材です。
神社やお寺の屋根に今でも現役で使われていることを考えても、耐久性の高さは明らかですね。
耐久力が非常に高く塗装も必要ないため、メンテナンスに手間がほとんどかかりません。
定期的に塗装が必要な近年の屋根材に比べると、塗装費用などを浮かせることができるというわけです。
ただし、全くメンテナンスの必要がないわけではありませんので注意は必要となります。
日本瓦と言うと、田舎のお宅にありがちな「いかにも和風」という見た目を想像しがちです。
しかし実は、日本瓦の中にも洋風のデザインにも合うフラット形状のものや、波の大きな形状のものも存在しています。
日本瓦の種類
日本瓦にもいくつかの種類があり、様々な見た目を楽しむことができます。
ここでは、大きく3つの種類に分けられる瓦の特徴を紹介していきましょう。
釉薬瓦
釉薬瓦は、焼き物に施される釉薬が塗られた瓦のことを指します。
陶器によくある、色とツヤのある仕上がりが最大の特徴です。
釉薬の種類により着色も可能なため、様々な色を選択できる日本瓦となっています。
ツヤの正体は釉薬によるガラス質の膜で、瓦の耐久性を強化することに一役買っています。
また、瓦の耐水性を高める役割も担っているため、最も耐久性の高い瓦ということができるでしょう。
いぶし瓦
いぶし瓦は、焼きあがった瓦を蒸し焼き状態でいぶして作られる瓦のことを指します。
いぶされた銀色の見た目が特徴的で、釉薬瓦のようなツヤはありません。
いぶすことにより、瓦の表面に炭素膜が形成されます。
この膜が、渋い銀色の風合いを演出しているというわけです。
ただし、膜は徐々に落ちてしまうので、年月の経過と共に黒色に変色してきます。
ただ、この見た目の変化が好きという人もいるので、一概にデメリットとも言えない特徴となっています。
無釉瓦
無釉瓦は、その名の通り釉薬を施していない素の状態の瓦のことです。
いぶし瓦も、釉薬を使っていないという点において、無釉瓦の一種と考えることができますね。
金属酸化物を粘土に練りこんで作るものや、焼き具合のみで色を出すものなどが存在します。
基本的に焼きあがった後に手を加えないため、自然な風合いが魅力の瓦ということができます。
日本瓦屋根の劣化症状
日本瓦は非常に耐久性の高い屋根材ですが、全く破損しないというわけではありません。
陶器のお皿が割れるように、何らかの衝撃を受けると破損することは十分考えられます。
また、基本的に屋根に固定しているわけではないので、地震などの影響で動いてしまうこともあるでしょう。
瓦屋根に劣化や不具合が生じてくると、建物内に雨漏りのような不具合が発生するリスクが高まります。
このような事態を防ぐためには、瓦屋根の劣化をいち早く察知し、適切なメンテナンスを実施することが必要です。
そこで、日本瓦屋根の劣化症状をいくつか紹介しておきましょう。
瓦の割れ
屋根は建物の中で最も過酷な環境にさらされているので、瓦が割れてしまうことがあります。
高温で焼かれているため、非常に強度の高い日本瓦ですが、それでも飛来物の衝突など不慮の事故により割れてしまうことはどうしても避けられません。
瓦が割れてしまうと、できた隙間から雨水が浸入してしまいます。
そうすると、瓦の下にある防水シートや木材が劣化して、最終的に雨漏りに発展してしまうのです。
ちょっとした割れが大きな被害に発展することもありえるので、油断は禁物と言えるでしょう。
また、悪徳業者を屋根に上げてしまうと、わざと壊して修理を促すこともあるので注意が必要です。
悪徳業者は「屋根が傷んでいる」などと突然現れるので、知らない人を屋根に上げないことは肝に銘じておいてください。
瓦のズレ
台風などの強風の影響を受け、瓦が動いてずれてしまうことがあります。
瓦がずれると隙間が生じてしまうため、こちらも雨漏りなどの不具合の原因となるのです。
また、屋根の下地が劣化することにより、瓦がずれてくることもあります。
もし、広範囲で瓦のズレが見られるようなら、一度下地の点検を専門業者に依頼した方がいいでしょう。
下地が腐食してしまっているなら、最悪の場合屋根が崩壊してしまうことも考えられます。
漆喰のはがれ
瓦屋根には、棟部などの空洞を埋めるために漆喰が施工されています。
ただ、屋根に施される漆喰は下地の土に施されているので密着性があまり良くありません。
経年劣化で剥がれることは避けられないので、定期的なメンテナンスが必須と言えます。
ただし、漆喰が剥がれたとしても、下地の土が水分の浸入をある程度防いでくれます。
漆喰が剥がれてきても、すぐに雨漏りにつながるようなものではないので、慌てることなく修理の準備を進めてください。
軒先や屋根面の歪み
軒先は通常、直線でなければなりません。
しかし、瓦屋根の重量の影響を受けて歪んでしまうことがあります。
基本的に瓦葺きの建物は、瓦の重量に耐えられるよう頑丈に作られています。
しかし、骨格となる木材が劣化して強度が落ちることで、軒先が重さに耐えられなくなるのです。
こうなると、瓦が落ちてしまうことも考えられるので、早めの修理が必要といえるでしょう。
また、軒先ではなく屋根面が歪んでしまうこともあります。
こちらのケースでは、瓦の下地として使われている野地板という木材が腐食していることが考えられます。
全体的に瓦の並びが不均一になるので、見た目に注意して劣化の状態を見極めてみてください。
藻やコケの繁殖
瓦は防水性能が低いので、藻やコケが繁殖してしまうことがあります。
藻やコケは光合成で栄養分を作れるため、水分さえあればどこでも繁殖できるのです。
瓦は陶器と同じ性質を持つため、藻やコケが生えても悪影響が及ぶことはほとんどありません。
ただし、瓦の下に施工している土にまで広がると、湿気が飛ばないなどの悪影響を及ぼしてしまいます。
また、家の外観もよくないため、洗浄してきれいな見た目を保つようにしてください。
日本瓦屋根のメンテナンス方法
日本瓦の劣化を発見したら、なるべく早めに修理やメンテナンスをする必要があります。
ちょっとした割れやずれだからと長期間放置してしまうと、そこから雨水が浸入して建物本体を傷めてしまうことにつながってしまうのです。
とは言え、すぐに雨漏りに発展したり屋根が壊れたりするようなことはありません。
あせることなく修理業者を吟味して、優良業者に修理を依頼することが費用を抑えて適切なメンテナンスを実施する最大のコツとなります。
日本瓦屋根のメンテナンスは、主に以下の方法で実施されます。
瓦の交換
破損した瓦は、1枚だけでも交換できます。
そのため、割れた瓦を発見したらすぐに取り替えてしまうことをオススメします。
瓦を数枚交換するだけなら、修理費用もそこまで高額にはなりません。
瓦がずれているだけの場合は、きちんと整列させるだけで不具合を止めることができるケースもあります。
ただし、瓦がずれた原因が下地の劣化の場合、瓦を並べなおすだけでは根本的な解決にはなりません。
広範囲で瓦がずれているようなら、一度下地までチェックしてもらうようにしてください。
漆喰の塗りなおし
漆喰部分が剥がれてきたら、塗り増しするか塗りなおすことで修理する必要があります。
漆喰は、適切な厚みで均一に施工しなければならないので、専門業者の力が不可欠です。
また、漆喰が完全に取れてしまい棟部分の劣化が進んでいるなら、棟そのものを修理した方がいいケースもあります。
劣化状況により、必要となる工事が異なってきます。
素人では判断が難しいので、優良な屋根修理業者に一度検査してもらうことをオススメします。
葺き替え
葺き替えは、屋根そのものを全て交換してしまう修理方法です。
既存の屋根を撤去してしまい、全て新品の屋根材に取り替えます。
瓦や漆喰だけでなく、屋根の下地材まで劣化してしまうと屋根の葺き替えが必要になります。
屋根のメンテナンスの中でも、最も高額になる修理方法です。
耐久性の高い日本瓦ですが、ちょっとした欠けが発生するなど劣化の症状は意外と発生するものです。
瓦の欠けている部分が雨水の浸入経路となり、下地が劣化してしまうケースも少なくありません。
だからこそ、瓦や漆喰に発生する不具合には、早めに対処する必要があります。
また、屋根の下地材には寿命があります。
メンテナンスをしっかり実施していたとしても、数十年に一度は交換が必要となるので覚えておくようにしてください。
メンテナンスで葺き替えが必要となるのは、屋根の下地として施工されている野地板や、防水シートが劣化しているケースに限ります。
下地が無事であるにもかかわらず、業者の儲けが大きい葺き替えを無理に勧める悪徳業者もいるようなので、注意するようにしてください。
日本瓦の屋根は耐震性が低い?
日本瓦は他の屋根材に比べて重量があるため、地震に弱いと言われています。
実際、屋根が軽量なほど耐震性は向上します。
と言うことは、日本瓦の建物は地震に弱いというのも納得ですね。
しかし実際のところ建物は、屋根の重量も考慮した上で倒壊しないよう設計されています。
つまり、日本瓦が重ければ、それに耐えられるよう建物本体も頑丈に作られているということです。
そのため、日本瓦の屋根だからといって、耐震性の低さを心配する必要はありません。
軽量な屋根であっても、建物本体が弱ければ地震に耐えることはできないのです。
耐震性の高さを考えるなら、建物全体の強度のバランスをきちんと見る必要があります。
瓦屋根の修理やメンテナンスも桜建装にご相談ください
日本瓦の屋根に上がるには、細心の注意と慣れが必要です。
もし、踏んではいけない部分を踏んでしまうと、瓦を踏み割ってしまうおそれがあるのです。
そのため、日本瓦の屋根の検査は、慣れた専門業者に依頼する必要があると言えます。
もし、瓦の割れやずれが見られるようなら、私たち桜建装にご連絡ください。
屋根の専門業者である私たちなら、瓦の劣化状況から下地の状況まで詳しく調査いたしますよ。
もちろん屋根瓦一枚の交換でも喜んでご対応いたしますので、些細なことでもお気軽にご連絡くださいね。