近年、一般住宅でも屋上のある「陸屋根」タイプの戸建て住宅が、屋上スペースを有効利用ができると人気が出てきています。
2階がリビングで、目の前に広いバルコニーのついている家も、モダンでおしゃれな生活空間から増加中です。
しかし、陸屋根やベランダ、バルコニーは、傾斜がなく排水性能が低いため、定期的に防水工事をしなければなりません。
防水工事には様々な種類があり、どの業者にどのような修理を依頼すればよいのか、なかなか判断できずに困っているかもしれませんね。
そこで今回は、陸屋根の防水工事を中心に、防水工法の種類と特徴、費用の目安や保証期間について説明していきましょう。
目次
屋根修理における防水工事とは?
新築時に万全に防水加工しても、建物は年月の流れと共に劣化し、いずれは防水効果が失われて雨漏りが発生しやすくなります。
雨水が内部まで浸入し、住宅の基礎となる柱や梁が腐ったり鉄骨が錆びたりすると、住宅の強度が落ちることにもつながるでしょう。
また、屋根や天井の張替えとなると、修繕に多額の費用がかかります。
防水加工が必要な箇所は外壁のほか、ベランダやバルコニー、アパートやマンションの廊下部分、屋根や屋上があります。
特に屋根は直射日光をじかに受けているため、塗装表面の塗膜の劣化が激しく、どこか1箇所でも防水効果が落ちると、そこから雨水の浸入を許してしまいます。
特に、屋上のあるフラットな陸屋根の場合は水はけが悪いため、入念な防水工事が必要となってきます。
防水工事のタイミング
ご自宅に屋上やベランダ、バルコニーがある場合は、住宅の寿命を伸ばすために、定期的に防水工事をすることをおすすめします。
メンテナンスの目安としては、以下の症状が挙げられます。
- ・屋上の床面に大量の雑草が生えてきた
- ・ベランダや屋上の排水や水はけが悪い
- ・土砂や粉塵が屋上にたまり、雨どいの詰まりが心配
- ・以前に敷いた防水シートがはがれかけてきている
- ・コンクリートにひび割れが見られる
屋上でこれらの症状が見られたら、劣化部分の修理や防水工事のやり直しが必要です。
最上階の部屋の天井が既に雨漏りしている場合は、早急に防水工事をしなければ被害が広がり、大掛かりな修理が必要となってしまいます。
屋根修理の防水工事の種類と特徴
屋根の防水工事には、ウレタン防水、シート防水、FRP防水、アスファルト防水などの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
ウレタン防水
ウレタン防水は「塗膜防水」とも呼ばれ、ウレタンの防水塗料を塗る補修工事です。
屋根の防水工事では、最も一般的な工事となります。
全国の陸屋根の半分近くが、このウレタン防水をしていると言われています。
屋根や屋上、ベランダ部分の防水に最適で、低コスト・短期間で工事ができます。
液体状のウレタン樹脂を重ねて塗り、しっかりとした防水層を作って建物を雨漏りから守ります。
【ウレタン防水のメリットとデメリット】
ウレタンは液体状なので、凹凸のある面や段差がある複雑な形状の屋根でも施工しやすく、シート防水では難しい継ぎ目のない防水膜が作れます。
劣化部分の部分補修もでき、メンテナンス費が安くあがるほか、重ね塗りで対応するので、古い防水剤の撤去費用がかかりません。
また、ウレタン防水はベランダなどの狭い箇所やどんな場所にも使用でき、応用性が高い上に嫌な臭いもありません。
さらに、化学反応で比較的短時間で硬化するため、施工に手間や時間がかかりません。
しかし、ウレタンを塗ること自体は簡単ですが、均一の厚さに塗るのには技術が必要です。
職人によって、防水層の厚さにばらつきが出ることもあります。
耐用年数は10年から13年程度で、他の防水素材よりも防水効果の持ちが短いのがデメリットです。
塩化ビニールや合成ゴムのシート防水
シート防水は、塩化ビニールや合成ゴムでできた防水シートを貼り付ける防水工事です。
施工が比較的簡単で、短期間に防水工事が行えます。
また、コストも比較的安く、シートの色を選ぶこともできます。
建物は年月の経過で若干の歪みが生じますが、防水シートは伸縮性のある素材なので、形状変化にも適応できます。
シート状であるため、複雑な面の屋根には向いていませんが、雨漏りの応急処置によく使われ、陸屋根の部分補修工事にも適している方法です。
【塩化ビニールや合成ゴムによる防水シートのメリットとデメリット】
塩化ビニールシートの防水工事は、塩化ビニール樹脂でできたシートを貼り付ける防水工事です。
主に、鉄骨ビルの屋上で使用されます。
シートを重ね合わせて施工するので、繋ぎ目の強度が弱くなり、接着剤の劣化でシートが剥がれることがあります。
そのため、耐用年数以内でも定期点検が必要です。
施工の際にシートに隙間ができると防水性が低下するため、シート防水に慣れた施工会社に依頼した方が無難でしょう。
塩化ビニールシートができる前までは、ゴムシートが主流でした。
ゴムシートは強度が弱く、鳥に破かれるリスクもあるので、防水シートの工事の場合は、シートの素材にも注意が必要です。
FRP防水
FRP防水は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を使用して、屋根の表面に防水層を作る、耐久性の高い防水方法です。
ビル・アパート・マンション・陸屋根住宅など広く採用されており、ポリエステル樹脂やガラスマットを塗り重ねて防水層を作ります。
下地処理のプライマー、下塗り、中塗り、上塗り、仕上げのトップコートと、5層で1つの防水層を作るため、しっかりと防水加工できます。
【FRP防水のメリットとデメリット】
FRP防水は、軽くて強度があり、ウレタン防水やシート防水に比べて耐久性に優れています。
しかし、その分費用は多少高額です。
下地に強力に接着するのが強みですが、その反面、地震などの揺れでひび割れしやすいこともあります。
紫外線により劣化するため、トップコートで守る必要があります。
ただし、トップコートも経年劣化するため、定期的なメンテナンスが必要です。
FRP防水をやり直す工事では、古い塗装がプラスチック廃材となり、産業廃棄物として廃棄費用が発生します。
アスファルト防水
アスファルト防水は、アスファルトでコーティングした不織布の防水シートを、接着しながら何枚も貼り重ねる工法です。
厚い防水層が作れるため耐用年数が長く、ビルやマンションの屋上の防水工事に広く使われています。
アスファルト素材シートを何層も接着するため、重量が重くて一般住宅には向きません。
アスファルト防水の施工方法には、大きく分けてトーチ工法と常温工法があります。
【トーチ工法】
トーチ工法は、アスファルト・ルーフィングの裏面に厚塗りされたアスファルトを、石油バーナーであぶりながら熱で溶かして貼り付ける方法です。
加熱の際に煙と臭いが出るため、周辺環境への配慮が必要です。
【常温工法】
常温工法は、アスファルトをコーティングした防水シートを、粘着剤で貼り付ける方法です。
加熱しないため「冷工法」とも呼ばれ、施工時に、トーチ工法のような煙や臭いは発生しません。
コーキング防水
陸屋根で、周辺壁部分の立ち上がりやドレン周りにひび割れが見られる場合は、コーキング剤で応急処置することができます。
コーキング防水だけでも内部への雨水の浸入を防げるため、応急処置としては有効な屋根修理の防水作業と言えます。
しかし、表面の劣化が見つかった段階で基礎部の腐朽も考えられるため、専門家に一度みてもらった方がいいでしょう。
防水工事では、できるだけ早めに対応して、被害を最小限に食い止めることが大切です。
【各種防水工事のメリットとデメリット】
防水方法 | メリット | デメリット |
ウレタン防水 | ・施工会社が多く、技術の高い工事が受けられる ・工程が単純なので、工事日数が短くてすむ ・材料費が安いので、工事代も安くなる ・複雑な形状の上にも塗れ、継ぎ目のない防水塗膜ができる ・劣化部分の一部塗りができて、メンテナンス費が安くあがる ・重ね塗りで施工するので、古い防水剤の撤去費用がかからない |
・耐久年数が比較的短い ・防水層の厚さにばらつきが出やすい ・外部からの衝撃に弱い |
シート防水 | ・シート状で、価格も低コスト ・短期間で工事でき、施工後すぐに人が歩くことができる ・シートの色が選べる ・耐候性に優れ、紫外線や熱に強い ・丈夫で穴あき・破れが発生しにくく、陸屋根防水に向いている ・耐久年数は10~15年 |
・シート繋ぎ目の劣化で、シートに浮きや剥がれが起きやすい ・接着剤の耐久年数が短い ・耐用年数以内でも定期点検が必要 ・シート状で、複雑な屋根には向かない ・シート貼りに、職人の技術と経験が必要 |
FRP防水 | ・軽量で、防水性・耐久性に優れている ・乾くのが早いため、工期が短くてすむ ・硬化すれるとプラスチックになる |
・施工時に臭いが発生する ・地震でひび割れを起こしやすい ・再塗装する際にプラスチック廃材がでる |
アスファルト防水 【トーチ工法の特徴】 |
・トーチバーナーだけで簡単に施工できる ・ルーフィングを溶着で接合するので、施工不良が少ない ・層の厚いしっかりとした塗装ができる |
・重量が重くて一般の住宅にはむかない ・加熱の際に煙と臭いが出る |
アスファルト防水 【常温工法の特徴】 |
・熱で溶融しないので煙がでず、周辺環境への心配がない ・工事中に嫌な臭いがしない |
・ルーフィングシートの接着技術が必要で、施工不良が起きやすい |
コーキング防水 | ・表面の応急処置に最適 | ・建物内部の劣化まで修理できない |
屋根修理:用途と場所に最適な防水工事を選ぶ
ビルの屋上に菜園を作るなど、よく水を利用する場合はアスファルト防水がおすすめです。
また、人の出入りが多い場所の防水には、短期間で工事のできるシート防水が向いています。
形状が複雑な屋根には、狭い箇所にも塗りやすく施工が簡単で継ぎ目の出ない、ウレタン防水がオススメです。
FRP防水は紫外線に弱いため、直射日光に常にさらされる屋上には不向きですが、ベランダ防水では効果を発揮します。
FRP防水のトップコートに紫外線予防をすれば、軽量で強度の高い防水加工ができます。
このように、それぞれの防水工事には最適なシチュエーションがあります。
あなたのお宅の状況に合わせて、最適な工法を選ぶようにしてください。
【各種防水工事の耐用年数一覧表】
防水工事の種類 | 耐久年数 | 価格 | 特徴 | 厚さ |
ウレタン防水 | 7~13年 | 普通 | 改修工事が簡単 | 3.0mm |
シート防水 | 10~13年 | 安価 | 薄いので損傷しやすい | 1.5~2.5mm |
FRP防水 | 8~13年 | 一般的 | 耐水性・耐蝕性に優れている | 2.5~4.5mm |
アスファルト防水 | 15~20年 | 高価 | 防水層が厚く、耐用年数が長い | 5~10 mm |
※参照URL:http://bosui.jp/type/
屋根修理:防水工事の費用対効果
防水工事にかかる費用は、工事準備費用、材料費、下地処理、防水作業などに分けられます。
また、材料費の変動や、工事現場の状況によっても変動します。
見積額が、ネット掲載相場よりも高すぎたり安すぎたりする場合は、他の業者にも見積依頼し、施工内容や単価を再確認するようにしてください。
ただし、劣化部分が長期間放置されていた場合は、下地の凹凸を取り除く処理に、手間と費用がかかる場合があります。
今後の防水効果の向上のために、傾斜をつけて雨水がうまく流れるような下地調整をすることも大切です。
工事の準備で足場を組む必要がある場合は、高い足場代が発生します。
また、FRP防水では、古い素材を産業廃棄物として廃棄する費用が発生します。
【屋根防水工事の費用目安】
防水工事の種類 | 費用目安 | 備考 |
ウレタン防水 | 2,500~7,500円/㎡ | 一般的で最も安価 |
シート防水(ゴム・塩ビ) | 2,100~8,000円/㎡ | ゴムは安価だがシートの品質で価格差がある |
FRP防水 | 4,000~9,000円/㎡ | 古いコーティングの廃棄費用が高い |
アスファルト防水 | 5,500~8,000円/㎡ | ビル屋上など広い面積の工事になる |
コーキング防水 | 5,000~30,000円/1箇所 | 劣化具合では、部分修理では修理できない |
一般住宅の防水工事費は、20万円~40万円が目安の相場と言われていますが、防水工法の単価と屋根面積で大きく異なります。
ネット上の単価にも大きな開きがあるため、あくまでも参考として数社から見積もりをとり、専門家と現地確認の上、最善な修理方法を相談することが大切です。
防水保証の期間
防水工事は方法や使用する素材によって、防水機能の耐用年数は異なります。
ただ、一般的な防水保証期間は10年なので、目安にするといいでしょう。
10年の防水保証でも、免責事項で保証が適用されない場合もあります。
特に、住宅自体の経年劣化や、大規模な自然災害後の雨漏りなどが該当するので注意が必要です。
風災や雪災などの自然災害は、火災保険の補償対象にもできるため、万が一に備えて保険適用ができるようにしておきましょう。
ちなみに、防水工事の保証は「3社連盟保証」と言って、受注業者、施工業者、材料メーカーの3社が当事者となります。
3社間で保証年数が異なる場合は、最も短い年数となるなどの取り決めがあるため、保証内容や免責事項を確認することも大切です。
特に、陸屋根住宅の雨漏りは、保険適用が難しい場合もありますので、日頃からのメンテナンスと早期補修を心がけるようにしてください。
陸屋根の雨漏りも桜建装にご相談ください
屋上を有効利用できるため、最近では一般住宅でも陸屋根が増えてきています。
それに伴い、屋根修理で陸屋根の防水工事が占める割合も増えてきています。
住宅で防水工事が必要な箇所は、屋上のほかにも、雨の吹き込むベランダやバルコニー、外部の廊下部分など意外と多いので注意が必要です。
経年劣化で雨漏りが発生し、雨水が内部まで浸入すると、住宅の基礎となる柱や梁にダメージが及びます。
もし、陸屋根の屋上やベランダから雨漏りが発生しているようなら、私たち桜建装にご相談ください。
私たちは屋根専門のプロフェッショナルなので、原因をしっかりと特定した上でベストな修理方法をご提案します。
当然、一度相談したからといってしつこい営業はいたしませんので、お気軽にご連絡ください。